印伝の特徴
鹿革に漆で柄付をした甲州地方(山梨)発祥の伝統工芸品で、しっとりとしたさわり心地の鹿革は人の肌に近い素材と言われており、しなやかで軽く丈夫な特徴をもっているため、武具や甲冑の装飾など300年以上前から使われている素材です。
漆の柄付けは時間が経つと共に色が冴え、深みある光沢に変化していく為、使い込むほど持ち主の手になじむという、天然素材ならではの特性をお楽しみいただけます。
柄に込められた意味
印伝に使われている柄はそれぞれ意味が込められていて、幸せを願う意味合いや、厄避けの、商売繁盛などの意味が込められた柄もあり、用途によって柄を選んでみたり、贈り物などではその思いを柄に込めて見てもいいかもしれません。
【菊菱】
菊を浸した水「菊水」を飲むと長寿を保つという中国の故事から不老長生の象徴となり、日本でも齢草の異名があります。印伝では花弁を図案化したものや唐草との組み合わせ模様が多く見られます。
【梅】
「万葉集」に多く詠まれた梅の花は平安時代まで花の象徴とされていました。「歳寒三友」と称されたことや厳しい冬から春を迎える喜びを反映した吉祥の模様として用いられてきました。
【トンボ】
とんぼは「あきつ」ともいわれ、日本の古称である「あきつしま」に通じます。中世には武士の間で「勝虫(かつむし)」とも呼ばれたことからとんぼ模様は武具や装束に多用されました。
【紗綾形】
吉祥・万徳の印である卍の形をくずして連ねた模様です。近世初頭に中国からもたらされた紗綾とよばれる絹織物の地模様に用いられ、名が付けられました。服飾の他、建築物の装飾等に多用されました。
【亀甲】
中国思想の四神の一つである「玄武」が由来とされ、亀の甲を図案化した六角形やそれを組み合わせた模様を指します。平安・鎌倉時代より厄を祓い身を守る吉祥模様として、装束や調度品、武具等に用いられました。
【花唐草】
四季を愛でる日本では花の模様は好まれ、古くから様々な工芸に取り入れられました。長寿や繁栄を象徴する唐草との組み合わせにより、華やかさが一層深まっています。
【葡萄】
地中海沿岸では豊穣を表わす聖なる樹とされ、模様として多用され、日本には奈良時代にもたらされました。写実的に描かれた他、りすや唐草等と組み合わせた模様が多く見られます。
【アメリカンブルー】
アメリカ原産の青い花ということから、日本ではそう呼ばれました。花つきが良く、茎が地面にはうようにして成長し、毎年きれいな青い花をたくさん咲かせる姿、そして暑さに強く真夏でも開花が鈍らないことから「溢れる思い」という花言葉が伝えられています。
【網代編】
網代は細く削った檜皮、竹、葦などを交差 して編んだもので、垣根や屏風、などに用いられました。その様子を象った模様も網代と呼ばれ、織物などに多用され古くから好まれている柄です。